彼を家から追い出してから1ヶ月が経ったことに過ぎてから気がついた。スマホに表示される日付が18日になっていた。
もうそんなことすらどうでもいいのかと、やっぱり、あの時辛いながらにも綴った文章通り少しずつ前を向いて歩き出しているんだと実感した。
これから私はどんどん進んでいくのだろうから、回復の過程を後から辿れるように、いつか「あー、そんなことあったな」と読み返すためにきちんと自分の気持ちを記しておこうと思う。
独身女の初めての一人暮らしは心と部屋の整理を終えたらとても快適なものだ。
好きな時間に起きて寝て、まあまあ楽しくて気楽な仕事を時々して、好きなものだけを料理して食べる。毎日植物に水をやり、ゲームをして、アニメを好きなだけ見る。そして週に数回は実家の犬と猫、鳥達に会いに行っては彼らのおもちゃや服、首輪を作る。
あれだけ未来にしか希望を見出せなかった私は今の私を見てどう思うのだろうか?
あまりにだらしなくてがっかりするのか、それとも好きなことを好きなだけのびのびとやれる未来があることに喜ぶだろうか?
きっと、まずは恋人がいないことに驚くんだろう。そうして目を丸くする幼き頃の私の前でニヤニヤしながら少し威張ってやりたいものだ。「まー、まだまだ今の君は何にも気づけてない子供だからね」と。
いや、「今は辛いだろうし、これからも辛いことは沢山あるけど君は必ず乗り越えられるから大丈夫だよ」と、言うべきか。
少なくとも色々なことをそれなりに乗り越えられた私は今の生活が好きだし、楽しい。
恋人がいる時に感じる多幸感とはまた違うけれど、平穏な日々がただ過ぎて行く毎日は幸せだと感じる。
ふと、学生の時に私の片思いから少しの間お付き合いをしたものの、私に憎しみだけを残して去った男のことを思い出した。
いつの間にかすっかり忘れていたからだ。
あれだけの憎悪がすっかり忘れていた、でこうもあっさりと消えてしまうものなのだろうか。
あの憎しみの正体はなんだったのだろう。
もう考えようとも思えないほどにどうでもいいことになってしまった。
それより今日の夕飯の方が大事だ。
心を鬼にして恋人を切らして1ヶ月、いつの間にか自分の足で立てるようになっていたらしい。
いつの間にか今を生きることができるようになったらしい。
これが自立の一歩なのかも、しれない。
なんか、生きててよかった